こども心身医療研究所の活動方針

こども心身医療研究所の目的
 

 一般にわが国では「精神的・心理的」への拒否感が根強く、例え問題が出現しても医療機関を訪れるのが遅れる傾向にあります。一方で小児科では気軽に母親が病気以外の種々の相談を医師にする現実と、身体症状を子どもが訴えた時には、誰もが小児科を受診します。このような状況から小児科で、心理的なものも含め、つまり心身医学的に診る施設がもっとも望まれると考え、本研究会の付属施設であるこども心身医療研究所・診療所が昭和60年(1985)に開設されました。現在まで厳しい医療事情の中で、多くの方々のご理解やご協力、援助(寄付)に加えて職員の努力で運営が行なわれてきております。

不登校の背景と病因に対する私たちの組織の考え
 

 わが国では、不登校児が毎年増加し続け、平成13年(2001)に年間14万人近くにまでになり、その後は若干減少傾向がみられていますが、年々生徒数が減少していることを考えると、今も横ばいか微増という状況です。同じような状態である高校中退者も、20年以上前から毎年ほぼ10万人を超えています。この二つの現象をみても「学校に行けない//行かない/行きたくない」子どもは、わが国の大きな社会問題で成因は複雑です。不登校は中学生に多く、文部省が平成2年(1990)に「不登校はどの子にも起こる」と発言したことも加わり、一般に中学校の管理(校則)や受験勉強など表面的現象に大きな原因があるとされています。

しかし、不登校が世界中でわが国でのみ特異的に激増している点や、「高校中退者・不登校」「大学生の不登校」、青年期から今や中年の問題にもなってきた「引きこもり」「フリーター」「ニート」「些細なことで会社を辞める若者」などの出現や増加は、そのような単純な思考でこの問題の背景を論じられないと、冨田は常に主張し、平成3年に不登校を社会的視野から「日本の文化」と命名し、その後「暦年齢に求められる社会集団に参加できない状態」と独自の定義をしています。そして、その要因として「自己表現の拙さとその結果による対人関係の拙さ」と分析し、これを「日本の伝統的な精神風土と、現代社会のありように由来している」と捉えています。(詳しくは新刊の「学校に行けない/行かない/行きたくない−不登校は恥ではないが名誉でもない」へるす出版新書)をご覧ください)。

 この「文化論」は日本の精神風土である母性社会と勤勉な民族性に、父性社会の欧米の民主主義が敗戦後のわが国に入って、この三者の複雑な組み合わせの「負の集積」の一つに不登校があるとみています。この論を発表した後、テレビ、ビデオ、テレビゲームから最近ではインターネット・携帯電話などバーチャルリアリティー(仮想現実)で育ち、実体験をしていない社会性の未熟な子どもの増加も不登校を激増させていることに気づくようになり、この現象も現代社会特有のもので、やはり文化と捉えてよいので、「日本の文化」と捉える論が強化されたといえるでしょう。その後、心理分野からも河合隼雄氏も「文化の病」と命名しています。

 このような思考の上に治療・指導を考えて運営されているこども心身医療研究所では、一般的な「不登校児は自主的に登校するまで待つ」「登校刺激は与えない」「勉強のことは言わない」という方針で治療・指導を行なっておりません。臨床的には身体症状を診る小児科に、彼らの心を診る心理部門、彼らの学校に行かないことから派生する社会性欠如と勉学の遅れをみる教育部門の3本立てで、対応するのが適切と考え実行しています。もちろん神経症的な症状が強い/精神病が考えられる場合や、明らかに学校・学級に問題(教師によるいじめ、学級崩壊など)がある場合には、登校刺激を与えるような治療は行ないません。

 上記のような考えで不登校への治療や指導を行っていますので、個々に違ったものになり、画一的方針では方針では対応できないと考えています。

診療形態 

 こども心身医療研究所・診療所では小児科医と精神科医に加えて、臨床心理士と教師がグループを組んで個人診療と集団治療を行なっています。親指導が重要であるとの考えで、原則的には親子並行面接(子どもと親を同じ時間内で二人の治療者が診ていく)を行なっていますが、多くの例では通常の保険診療の枠を越えますので、診療所での保険診療以外に、研究所での費用を頂いております。ただし、保険診療のみの診療も行なっていますので、ご相談ください。なお、薬剤処方や各種身体面の検査などはすべて保険診療で行っています。

個人治療に加えて集団治療を行なっているのが最大の特徴で、子どもの生活習慣の確立、社会性を育てる、勉学の遅れに対処しております。集団治療は他の機関での治療を受けながら参加することも可能です(治療を受けている機関の承諾が必要)。
 入院が必要な場合には、連携している下記の病院の小児科に紹介し、当方での治療と並行しながら入院治療を行なっています。

紹介先病院名:済生会 泉尾病院・野江病院/大正病院/国立大阪病院/住友病院

 夏休みには、キャンプなどの行事を開設当時から実施し、これも一定の効果を挙げております。

← 戻る ←